柏熊 志薫
柏熊 志薫 かしくま しのぶ
弁護士登録:2007年登録
経歴:東京都出身。早稲田大学法学部・同大学大学院修士課程(民事法学専攻)修了・中央大学法科大学院修了。
DV、性暴力、ハラスメント
DVや性暴力、セクハラ事件などに対処しながら女性の尊厳を守ることと、困難(児童虐待、学校事故、いじめなど)に直面している子ども達を守ることです。
また、アスベスト被害を根絶するための弁護団に加わって、各種訴訟にも取り組んでいます。
細くても自分の足で立つことの素晴らしさ
弁護士をめざしたきっかけは?
高校時代にめざしていたのは、社会福祉の仕事です。当時は、特別支援学校の先生など社会福祉関連の仕事に就くことを前提に大学探しをしていて、その延長上で社会系の勉強ができる法学部を選びました。
実際に法学部で学んでみると、社会の仕組みやルール、構造など知らないことばかりです。同時に社会構造的な部分で被害を受けている人々がたくさんいることにも気づかされました。まずは法学を習得し、法律の世界で社会福祉的な貢献をしたいと考えたのが弁護士をめざした理由です。
『女性協同法律事務所』で働こうと思ったポイントはなんですか?
先生方や事務所の雰囲気に一目ボレしたからです!
同期の友人が当事務所の佐木さくら弁護士と親しくしていて、「素敵な先生だから」と紹介されたのが最初のきっかけです。面接で佐木弁護士と、事務所を開設した一人である辻本育子弁護士に会って、一目ボレしました。先生達も事務所の雰囲気もとても柔らかく感じました。プライベートなこともざっくばらんに話せたことを覚えています。
とくに印象的だったのは、面接当日が業務外の土曜日だったこともありますが、先生達がカジュアルな格好だったこと。その伝統を受け継いで⁉ 私も、裁判所に行かない日は、ニットなどを着て仕事しています。余計な緊張をせず、落ち着いて自分のペースでいられる場所です。相談者の方が当事務所に来たときも同じように感じていただけたらうれしいですね。
相談者に対し、とくにどんなことに配慮していますか?
とにかくお話に耳を傾けます。ご本人の言葉が出ないときも、ゆっくりお待ちします。
たとえば、DVで、日常的に暴言、暴力を受けていると、だんだんと考える力が奪われていきます。これをパワーレスといいます。本当であれば、人に殴られたら「何するのよ、やめて!」と言ったり、逃げたりできるはずなのに、DVが日常化すると、相手を怒らせないようにするだけで精いっぱい。「お前が悪いから俺を怒らせるんだ」といった言葉も受け入れてしまうようになります。洗脳ですね。
洗脳状態になると、自分がどういう被害を受けていて、自分がその時どうしたのかもわからなくなりますから、お話にまとまりがなかったり、ボーっとした状態だったりする方もたくさんおられます。ご本人の言葉がなかなか出てこない時も含めて、どんな状態であっても、私たち弁護士はじっくりお待ちします。その方が少しずつでも本来の力を取り戻していく過程に伴走し、解決のための選択肢をご提案できるといいなと思っています。
子どもを巡る問題にも高い関心をお持ちですね。
児童虐待防止や学校事故、いじめといった問題に取り組んでいます。学校に出向いて授業をする『法教育活動』も積極的に行っています。
虐待について言えば、その被害を受けている子ども達を守りたいという思いが一番にあります。ただし、虐待が起きてしまう原因や背景が必ずあります。それは、保護者の孤独、貧困、社会的孤立、気持ちの余裕のなさ、などです。
「虐待する親には厳罰を」という風潮が行き過ぎると、逆に保護者を追い詰めていきます。罰するよりも先にサポートが必要な家庭が多いように思います。セーフティーネットがないと、虐待はなくなっていかないという思いで、問題に取り組んでいます。
仕事の中で、どんな時にやりがいを感じますか?
家庭の内外で理不尽な扱いを受けた女性たちが、勇気をもって今までの場所から一歩踏み出した時です。みなさんの笑顔に私自身が励まされます。
弁護士は法律的な専門家ではありますが、依頼者の方を救済したり、上から腕を引っ張り上げたりするのではなく、伴走者だと思っています。
たとえば、「離婚するのかしないのか」「離婚した後、どうするのか」を決めて、選択していくのは依頼者ご自身です。でも、打ちひしがれてなにも決めることができなかった方が「離婚して、子どもとここに住んで、こんな仕事をして……」とその後の生活をイメージして、「やっぱり自分にとって今離婚することが必要だな」と考えられるようになる。
そんなプロセスに立ち会えるとき、本当に感動します。
DV被害などを受けていても、たとえば経済的に難しいので離婚しないという選択肢はもちろんあります。安全のことを考えると心配な思いもありますが、そういう方々には「何かあったら、いつでもまた相談に来てね」と話しています。本当に困った時のホームドクターのような存在になれたらよいですね。
辻本弁護士が教えてくれた言葉があります。それは、「細くても自分の足で立つ」ということです。
どんなにか細くても、一見頼りなさそうに見えても、自分の力で立って歩いていけることが一番大事。「収入が低くても、雨風しのげる居があって、子どもがいたらその子を育てていける、というふうになんとかやりくりできている。それでいいんじゃない? それが大事」というメッセージが込められています。「自分の足で立つ」ことがまだできない人たちがいらっしゃるならば、サポートしていくのが私たちの仕事であり、それこそが女性の権利を守るということだと考えています。
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