原田 直子
原田 直子 はらだ なおこ
弁護士登録:1982年
経歴:福岡県出身。宮崎大宮高校・九州大学法学部卒業。
女性問題
主な分野:女性の生き方に関わる問題
これまで携わった主な事件:離婚を中心とした家族の問題と性的暴行被害事件。
セクシャルハラスメント事件や、職業病である様々なじん肺に関する訴訟。
1989年(弁護士7年目)に辻本育子弁護士とともに当事務所を設立し、2013(平成25)年から2024(令和6)年2月まで、所長を務めました。
※ 2004年度~2014年度、九州大学ロースクール非常勤講師(科目:ジェンダーと法)
※ 2016年度 福岡県弁護士会 会長
※ 2019年度 日本弁護士連合会 副会長
人は自分の幸せを求めてもいい。幸せになりたいあなたの思いに共感します。
弁護士を目指したきっかけは?
大学進学に際して法学部を選んだ時は、新聞記者になりたいと思っていました。ところが、4年生の就活期を迎えると、男子にはたくさんの求人があるのに、「女子に求人はありません」と堂々と言われる時代でした。
そこで、試験に合格すればできる仕事で、男女差別はないと思って、法律家をめざしました。弁護士を選んだのは、誰かに指図される仕事は自分に合わないかなと思ったからです。
女性協同法律事務所を設立したのは?
大学の先輩である辻本育子弁護士(2015年退所)と私の二人で設立しました。
当時は「女性と国際化」が時代のキーワードでもあり、女性が新しく、さまざまな社会に進出していくときにぶつかるであろう問題に対応できる法律事務所をめざしました。
どんな分野に取り組んできましたか?
一つは、女性の生き方に関わる問題です。
たくさんの離婚事件に関わってきました。人生のパートナーの選択は、その人の生き方を大きく左右する問題ですが、女性のなかには、選ばれることを重視し、別れる時も自分の意思で選択することに迷いがある方が少なくありません。
「この人といたら幸せになれない」と思ったら、別の人生の選択も考える、夫や子どものためだけに生きるのではなく、自分の幸せのために生きるという人生の選択ができたらいいと思います。
二つ目は働き方の問題です。
当事務所は、日本で初めてといわれるセクシュアル・ハラスメントの問題に取り組みました。職場の花、潤滑油といわれて補助的な仕事が中心の女性が、自分の実力を発揮し、責任をもって仕事をする、そのためには性差別をなくさなければなりません。
ライフワークのように取り組んできたじん肺問題も働き方の問題です。じん肺は埃の多い職場で長時間働いて、肺の組織が壊れてしまう病気です。自分や家族のために働くことによって身体を壊してしまう職業病は、過労死にもつながります。自分のやりたい仕事で生活を支え、健康に働く。そんな働き方ができたらいいなと思います。自分が喘息を抱えていたこともあり、じん肺患者さんの息苦しさ、悔しさを何とかしたいという思いで取り組んできました。
三つ目は弁護士会の問題です。
弁護士は社会正義の実現と基本的人権の擁護を使命としていますが、圧倒的多数は男性で、女性の生きづらさへの理解は必ずしも十分ではありません。弁護士会が男女を問わず、男女平等のために働く組織となるためには、女性の弁護士も弁護士会の役員を担い、積極的に発言していく必要があると考えてきました。
これまで取り組んできたことで印象的なことはありますか?
世の中は裁判所で判例が確定すると、それに従った対応をしなければならなくなります。セクシュアル・ハラスメント訴訟では、判決が確定後、労働省(当時)ですぐに検討会ができて、ガイドラインが作られ、法律の枠組みになるという大きな力になっていきました。
また、じん肺訴訟でも、国の無策を訴える訴訟を提起し、法律・規則が変わりました。このように、個人の権利が侵害されたと見える事件でも、普遍的な問題として、裁判を通して、社会を変える力の一端を担えるのは、やはり大きなやりがいです。
また、個人の依頼者の方々に関しては、裁判の勝ち負けにかかわらず、その人にとってこの選択はよかったのだろうか? とずっと心に残っている事件もあります。事件解決後も折々に生き生きとしたお便りをくださる方もおられて、励まされています。
どんな社会を目指していますか?
性差別や不平等のない時代が来てほしいものです。
女性の権利だけでなく、子どもの権利、高齢者の権利なども特別扱いされがちです。たとえば、女性は男性と生物学的に違うじゃないかということから、権利の内容も違うといわれる場面がたくさんあります。
確かに、女性が男性と同じように権利を行使したり、享受したりするためには、配慮が必要な場合があります。しかし、車いすの方が2階に上がれるようにするためにエレベーターをつけるのは当たり前なのに、高いところにあるリンゴを食べるために女性に踏み台を用意すると逆差別と言われます(下駄をはかせるとも言います)。「男女平等になったら、男女が同じ教室で着替えないといけなくなるよ」といった人もいました。でも、みんながリンゴを食べ、男女ともに、自分の裸を人に見られず個別の場所で更衣できるようにするのが当り前ではないでしょうか。
また、現在では目で見てわかる違いだけではなく、心の持ち方の違いに対する差別も深刻化しています。
実質的な平等とそのための配慮について、みなさんの理解が共通になり、暮らしやすい世の中になってほしいと思っています。
このホームページにたどり着いた読者に、エールを送るとしたら?
これまでお会いした方たちは、とてもまじめで一生懸命生きていて、自分のことより家族のこと、周りの人たちのことを考え、辛いことや嫌なことも我慢してこられた方がたくさんおられました。日本では自分の権利を主張することは自己顕示欲が強いとかわがままとか、マイナスのイメージを持たれることが多いように思います。特に女性はそうです。
しかし、嫌なことにはいや、辛いことを無理に我慢することはない、とお伝えしたいです。
自分が幸せでなければ、周りを幸せにすることはできないと思うのです。
貴女と貴女の大切な人たちの幸せのために、一緒に考えていきたいと思います。
当事務所の所員自慢をするとしたら、真面目で依頼者のために一生懸命働くことは大前提ですが、コミュニケーション能力や共感能力が高いということです。これは、弁護士にとって大切な能力だと考えています。相談者の皆さんが辛いと思うこと、うれしいと思うことを理解して、必要な解決を図るお手伝いができるということです。私もこれまでたくさんの依頼者の方々とともに泣いて笑って、多数の困難事案を乗り越えてきました。これからも困難を抱えている女性の皆さんにしっかりと寄り添っていく法律事務所であり続けます。
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