相原 わかば
相原 わかば あいはら わかば
弁護士登録:1995年
経歴:東京都出身。千葉県立船橋高校・一橋大学法学部卒業。
労働問題、女性問題
これまで取り組んだ主な集団訴訟は、北海道石炭じん肺訴訟、労災関連訴訟(過労死・振動障害・アスベスト疾患)、建設アスベスト訴訟等。
北海道と首都圏を行き来して育つ。2006年、当事務所入所(札幌弁護士会より移転)。「人間、自然が一番」とのシンプルな思いと環境への危機感から、省エネ・脱使い捨て社会を楽しく実践しているつもり。寒冷地仕様の体ながらクーラーも基本的に不要です。物持ちにも自信あり。
※九州弁護士連合会「両性の平等・男女共同参画に関する連絡協議会」委員長
何か違和感があるなら、それはきっと理由があること。まずは、話しに来られませんか。
女性協同法律事務所に入所したきっかけは何ですか?
札幌で8年半ほど弁護士をしていましたが、福岡に転居することになりました。福岡といえば、全国で連携して取り組んでいた石炭じん肺訴訟で、当事務所代表の原田直子と交流がありました。また、私自身、セクシュアルハラスメントや女性の労働問題を手がけていましたが、当事務所はこれらの分野でリーダー的存在として知られていました。実際、札幌時代に、特に被害者心理について裁判官の理解を得るのが難しい事件で、原田直子を頼り、裁判例や心理の専門家の紹介、助言を受けていました。こうした縁で、当事務所の取り組みや理念に共感し、入所しました。
女性協同法律事務所に入所して良かったと思うことは?
当事務所は女性の権利を守ることを理念の一つに掲げています。
「女性の権利を守る」というと「女性側からしか物を見ない」と排他的なニュアンスに受け止めて反発する人もいますが、男女の立場を対立的に捉えたくはありません。
社会の主流にいると固定観念によって見えにくいものが、主流にいない女性には見えやすい。女性の権利を守ることは主流ではない立場の声も大事にするということで、女性問題に限らず、LGBTなどの当事者や、家庭責任を果たしたり法令順守を求めたりして職場で孤立してしまった場合など、さまざまな問題に通底します。
非主流の視点に立ってきた私達は、当事者が抱えているつらさや違和感を想像しやすいように思います。さまざまな生きづらさが少しずつでも顕在化され、解消していけるように、個々の仕事を通じて働けることにやりがいを感じます。
社会に根づいてきた固定観念に変化はあるでしょうか?
性別によって役割を決めつけることは、「表立ってしてはならない」という程度には浸透したと思います。しかし、女性は外見や謙虚さが着目され、男性には甲斐性が求められるなどは依然としてあり、無意識に考え方や言動に表れるものを意識的になくしていく必要があります。個々の場面では指摘しにくい小さなことかもしれませんが、何も言わないと、そのことによって「容認した・された感」が醸成され、職場や社会にある固定観念を変えることができません。
たとえば、「女性は愛想よく」という価値観。愛想がよいことを美徳とみるのが悪いわけではないけれど、特定の人(女性)に強いるのはよくない。その枠からはみ出た人が疎外されたり不利を被ったりします。固定観念は自覚しにくいですが、自戒を含めて、自分の「当たり前」を疑う意識はもっておきたいです。残念ながら、調停や裁判にあたる関係者(裁判官、調停委員、弁護士など)の中にもたまに配慮不足の言動があって、当事者が不安に陥る例も見聞きします。「知らない・気づいていない」なら、一つひとつ説明して知ってもらう。そうしたところにも私達の役割があります。
特に力を入れている分野は何ですか?
女性問題と労働問題です。
転勤族の家庭に育ち、母からどこでも働けるように「手に職を」と耳にタコができるほど聞かされました。薬剤師だった母は各地でパートに就きましたが、最初の職場を辞めたのは残念だったようです。私の夫も転勤族だった時期があり、単身赴任も3回経験し今や私が大黒柱です。こうした状況や経験から、女性と仕事や家庭責任、家庭内での地位などは、私自身の重要なテーマです。夫の転勤時期の都度、単身赴任か就職活動かと悩んだことから、雇止めの不安は他人事ではなく、雇止め事案はハラスメントが転じたケースを含めて特に力が入ります。
他方、実際の取り扱い事件は、離婚などの家事事件が約7割を占めます。離婚と一口に言っても、DV、親権、養育費、慰謝料、財産分与など、諸々の面で男女の格差問題が凝縮されています。
たとえば、財産分与(夫婦財産を分ける時)で、夫は収入は高いが「稼げばよいから」とバンバン使って蓄えをしないので、離婚時点で財産がないケースがありますが、そのままでは妻に配分される財産はないことになります。妻が無償労働で家庭を維持したおかげで夫がキャリアを築き、経済力をつけたとしても、そうした事情は金銭的に反映され難いのが実情です。夫は離婚後も稼げますが、妻の経済的自立は容易ではなく、何より生活水準に大差が生じます。結婚制度の枠内にいれば守られるが、外れる際には、キャリア中断や無償労働は自己責任とばかりに考慮がないのでは、到底平等とは言えません。
弁護士業を中断して主婦をしていた期間もあるそうですね。
はい、単身赴任続きの状況に負けました。第2子の妊活のため逡巡の末に弁護士を2年半辞めました。当時、身近で「単身赴任続きで退職し、結婚8年目にして初めて同居した」などの話もあり、このままでは子どもを持てないと焦りまして、冬枯れの函館に赴きました。
初めての土地でしたが、行政や市民活動による育児や仲間作りの支援が手厚く、本当に助けられました。第2子は叶わなかったものの、世代を超えて地域をつなぐ主婦パワーに感動し、地域活動や地域でのつながりの重要性を再認識する貴重な機会になりました。暗たんとして赴いた函館が、温かい思い出に満ちた心のふるさとになりました。
福岡ならではの労働問題、女性問題というものはありますか。
福岡は都会だけに身近に歓楽街があるためか、性風俗産業に関連する問題が挙げられます。
学生が生活費を得るためアダルトビデオの出演契約をしてしまったけど取り消したい、発売を止めたいというものや、風俗店等の従業員が、立場の弱さから理不尽な契約を押し付けられた、練習と称して性的行為を強要された等のケースがあります。
また、離婚事案で夫の風俗通いが原因というものも目立ちます。男性優位の職場の中には、連帯感を育むとでもいうのか、皆で(!)風俗に行くところがあり、不貞行為というだけでなく、もともと価値観なのかそれが助長されるのか、女性軽視の言動からも夫婦の破綻をきたします。また男性の被害として、不本意ながら風俗通いや猥談に加わらざるを得ない等、セクハラやパワハラの問題としても現われます。
さらに、離婚事件に関して言えば、夫から、お金がないと離婚や親権が望めないと思い込まされて、資金を作るために風俗で働くケースも時々聞きます。もし弁護士に相談していたら、親権に関して経済力の心配はないことや、離婚までの別居中は夫に生活費の支払を義務付けられること等がわかり、つらい思いをしなくて済んだのに、ということがあります。
このホームページを見ている方に、届けたいメッセージはありますか?
当事務所は、勇気を振り絞って相談に来られた方の気持ちをしっかり受止める場所でありたいと願っています。手探りでどうしていいかわからないことも、一緒に話す中でいろいろな方法が見えるものです。「こう感じたけどいいのかな?」と迷われるかもしれないけど、その困りごと、違和感はきっと理由があります。まず、口に出してみると、同じように共感する人がいたり、それが実は大きな問題と根っこでつながっている問題だったりするので、違和感を口に出すことを恐れないでください。一緒に解決の道をみつけましょう。
私も、困難の中にありながらもフェアで前向きな依頼者さんに感銘を受けたり、新たな道を見つけて本来の力を取り戻してちょっとまぶしく感じる元依頼者さんからのお便りに励まされたりして、日々を乗り切っています。
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